資金の出所は報告義務なし 汚職の”温床”に疑問の声

資金の出所は報告義務なし 汚職の”温床”に疑問の声
 4月に行われる総選挙を目前に控えたインドネシアでいま、選挙運動費用を巡るカネの問題で、実態把握ができない”ザル”制度を危ぶむ声があがっている。
 総選挙参加12政党は3月2日までに、総選挙委員会(KPU)に選挙運動費用の第2期報告をした。第1期と合わせ政党は総額1.9兆ルピア(約165億円)を使ったことになる。KPUによると、グリンドラ党の3066億ルピアが最多で、正義統一党の364億ルピアが最少。ただ、期限内に報告書を提出しなかった候補者が続出。国会議員候補で少なくとも民主党、ハヌラ党、グリンドラ党にそれぞれ数十~100人規模いたとみられている。そこで、KPUは9日までを猶予期間としている
 実はこの報告制度には多くの欠陥がある。非政府組織(NGO)の汚職監視団(ICW)によると、資金の出所について報告の義務がない。したがって、資金の流れを詮索されることはなく、政党、政治家が選挙後に献金先に利益誘導することが野放図にできる”ザル”制度なのだ。また、この制度の透明性が極めて低いことから、届け出ている選挙運動費用の数値自体が果たして実態どおりなのか、適当に数字合わせしたものなのか、疑問視する向きが多い。
 同国では不透明なカネに対する捜査機関として実績のある汚職撲滅委員会(KPK)がある。だが、なぜか選挙の買収行為の取り締まりは職掌外で、警察がほとんど動かない現状では、事前に摘発する捜査機関は事実上ないに等しいという。したがって、不幸なことに選挙で世話になった分を汚職で返すという構図は変わらずに続くことになる。