中国が南シナ海で実効支配強め強気姿勢崩さず

中国が南シナ海で実効支配強め強気姿勢崩さず

 中国がフィリピン、ベトナムなどと領有権争いを抱える南シナ海で、軍事力を背景に実効支配を強めている。ベトナム沖で中国の国営会社が石油掘削作業を強行したほか、南シナ海の暗礁を埋め立て、滑走路のようなものを建設していることも表面化した。東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳が結束し、中国に対する「深刻な懸念」を表明した後も、強硬姿勢は全く変わっていない。

 中国は南シナ海のほぼ全域の領有権を主張しており、この主張を放棄することは考えにくい。南シナ海は原油や天然ガスなど豊富な資源を埋蔵し、同時に中東から中国本土に石油などを輸送する際の海上交通路(シーレーン)にもあたる。今後エネルギー需要が急増する中国にとって生命線になりつつあるのだ。

 中国がこの時期に強硬姿勢を一段と強めた背景には、米国のアジア政策が絡んでいる。4月にオバマ大統領がアジアを歴訪した際、中国をけん制して回る一方で、随所に中国への配慮もみせたからだ。中国各紙は、オバマ大統領が日本で尖閣諸島の問題で「領有権を巡る決定的な立場は示さない」と述べたことを大きく報道。このオバマ大統領の配慮こそが中国を勢いづけた面があると指摘する声が多い。

 米国は当面、中国との決定的な対立を避けるに違いない、というのが中国側の読みだ。そこで、米国の反応が鈍ければ、中国が今回の南シナ海での摩擦を口実に、かねて示唆してきた南シナ海での防空識別圏(ADIZ)の設置に踏み切る可能性も出てくる。日本をはじめ、ASEAN諸国も国際法のルールに基づいた協議で解決していくことを説くが、米国の出方次第では、全く妥協の余地はないと強行する中国の行動に、果たしてブレーキをかけることができるのか、甚だ心許ないといわざるを得ない。