フィリピンで拠点拡張の動き 緩やかな人件費上昇

フィリピンで拠点拡張の動き 緩やかな人件費上昇

フィリピンでいま、日系企業の拠点拡張の動きが静かに進んでいる。これはインドネシア、ベトナム、カンボジアなど東南アジアにおいても人件費が急上昇しつつあるのにひきかえ、フィリピンでの賃金上昇率の低さが際立っているためだ。

東南アジア諸国の2015年の最低賃金の上昇状況をみると、2010年比で、インドネシアは2.6倍、ベトナムは2.3倍、カンボジアは2.1倍と2倍を超えている。以下、タイで46%高、ラオスが10%高となっており、フィリピンは15%高だ。14年と比べてもインドネシアは23%高、ベトナムは15%高、カンボジアは28%高に対し、フィリピンはわずか3%高にとどまっている。

フィリピンの場合、生産年齢人口の平均が23歳と若く、労働人口が増え続けているうえ、インフレ率が安定していることも日系企業は好感している。マニラ郊外の工業団地の企業の最低賃金は日給335ペソ(約9000円)と安い。英語を公用語とするためコミュニケーションを取りやすいのも利点だ。産業が少ないため、完全失業率は7%近くの水準にある。したがって、工業団地では最低賃金の労働力が確保しやすい。インフレ率が3%程度で低位安定しているほか、労働争議も少なく、将来も急激な人件費の上昇はないとみられている。