問われる、本腰入れた「膨張する喫煙人口」への対応策
インドネシアでいま、潜行して一部で問題視されながらも、根本的な対策に手が付けられていないものがある。将来、医療費などで専門家の間で懸念が広がっている「膨張する喫煙者人口」への対応の問題だ。
国立インドネシア大学の試算によると、政府が規制強化などの対策を講じない場合、インド。ネシアの喫煙者数は現在の7400万人から、中間所得層の増大に伴い、2020年には1億4000万人に増加するとみられる。国際非政府組織(NGO)の東西アジアたばこ規制連盟(SEATC)によると、01年にインドネシアでたばこが原因とみられる疾病による死亡者数は2万人。同様の疾病に対する国の医療費支出は125兆9000ルピア(当時のレートで約1兆4980億円)で、たばこ税収の実に7.5倍だった。
重い腰をあげ、インドネシア政府は昨年12月、これまでより一歩踏み込んだたばこ規制策を講じると発表した。18歳未満や妊婦への販売を禁じ、製品外装の40%のスペースを使った警告表示を命じたほか、たばこ製品のメディアへの広告に制限を設けるなどの内容だった。しかし、この規制には当初から、その効果に疑問符が打たれていた。違反した場合の罰則がなかったからだ。また、政府は税収増を目指して12年にたばこ製品に15.5%の増税を実施。今年も8.5%の増税を実施したが、所得上昇などで吸収され、ほとんど喫煙者減を促す効果は上がっていないという。
インドネシア大学では、同国のたばこ消費量が09年の2510億本から12年には3020億本に増加したとし、今年も増加傾向が続いていると分析している。同大学の研究者は、インドネシアのたばこ製品に係る税率は小売価格に対して46%と、タイの70%やシンガポールの69%に対して低いと指摘、「政府は税率を70%に引き上げるとともに、国民の喫煙に対する意識を変える努力をすべき」と主張している。