HIV阻止へ刑務所で合法薬物投与の”荒療治”も
HIV(エイズウイルス)感染者数が約38万人に達しているインドネシアの刑務所で、ちょっと驚きの予防、治療が施されている。経口摂取による合法的な薬物を投与し、違法薬物依存を断つ”荒療治”が行われているのだ。注射器を使った違法薬物の乱用や売買春など、感染リスクの高い人が集中する点を逆手に取った措置だ。
ジャカルタ東部のポンドック・バンブ女性刑務所の受刑者約1000人のうち半数が薬物関連の犯罪者で、46人がHIV感染者。ここでは個人に合わせた治療が実施されている。特徴は薬物中毒患者に「メタドン」といわれる経口摂取の合法薬物を処方する点だ。薬物乱用で注射器を使い回すとHIV感染のリスクは確実に高まる。そこで、鎮痛薬として使われるメタドンで、エイズ拡大の温床となる注射器を使う違法薬物の摂取をまず断つわけだ。刑務所で処方し、出所後はインドネシア各地にある無料のメタドン処方病院へ通わせるしくみ。保健省の担当者は、刑務所でメタドン服用を習慣化すれば、出所後も違法薬物に手を出さなくなる-と意義を強調している。
エイズ対策に先進諸国が出資する国際機関「世界基金」(本部スイス)が行っているインドネシアへのエイズ対策支援は、最近10年間で1億3800万㌦(約133億円)に上っている。