インドネシアの風味調味料のシェア6割 味の素「マサコ」
日系企業が製造している商品で、単価は低くても、市場で圧倒的なシェアを占め、消費者に支持されている商品がある。味の素がインドネシアで1989年に発売したチキン風味とビーフ風味の顆粒調味料「Masako(マサコ)」がそれだ。マサコは日本の「ほんだし」にあたる商品だ。マサコは低所得の庶民が買いやすいように、調味料を小袋に分け安くする戦略で、3袋(計22.5㌘)を1000ルピア(約9円)で販売。現地ではスープや炒め物に広く使われ、風味調味料のシェア6割を占めている。現在の自社販売拠点は185カ所。
マサコは本物の風味・低価格・買いやすい仕様など様々にこだわった商品だ。その開発に2年かけた。まず、担当者が現地の家庭に約1週間泊まり込み、約120人に試作品を使った料理を食べてもらった。その基礎データに改良を加え、化学品による成分合成ではなく、チキンもビーフも本物の肉からつくることが大事との結論に達した。そして現地メーカーの調味料との味比べで、マサコの方がおいしいと答える方が6割になるまで試作を繰り返したという。
低所得者層も念頭に、コスト抑制もこだわり、既存品の半額で売り出した。だが、それでも農村部での需要開拓は容易ではなかった。そのため、食料品の並ぶバザールなどで販促イベントを繰り返し開き、味を知ってもらうことから始めた。また、1日100カ所以上の小売店回りも続けて行ったという。
商品名はインドネシア語の「Masak(マサック)=料理する」に由来。現地語でありながら、日本らしさを感じさせることも命名の一つの理由になった。液体調味料「SAORI(サオリ)」マヨネーズの「Mayumi(マユミ)」も販売している。