インドネシアで人材現地化へ新卒学生の採用活動が活性化
安定的な経済成長を続けてきたインドネシアで、新卒学生の採用活動に力を入れる企業が増えてきた。日本においては当たり前の新卒の採用活動だが、これまで各社が同時期に新卒の採用を実施することなどなかったインドネシアの人材市場においては、実は極めて新しい動きなのだ。
NNA.ASIAによると、数多くの海外ブランド品の販売権を持つ小売大手のMAPは新卒の採用を重視する企業の一つだ。新卒向けの採用活動は毎年8月~翌年1月に実施。主にインターンとして受け入れ、試用期間を終えた学生を採用している。新卒の採用人数は毎年増えており、今では年間100人以上となった。トヨタ自動車の製造子会社トヨタ・モーター・マニュファクチャリング・インドネシア(TMMIN)も、新卒の採用に力を入れている。自動車市場の拡大に伴う生産能力の引き上げに備え、ここ2年間は例年より多くの新卒を採用している。
採用活動で重視しているのは、トップクラスの大学やポリテクニック(職業訓練学校)との提携だ。インターンの受け入れ、卒業シーズンの後にある就職フェアへの参加を通じて、会社の魅力を学生にアピールしている。
インドネシアで新卒の採用活動に力を入れる企業が増えているのは、目先ここ急激に最低賃金が大幅に引き上げられたことで、労働コストの抑制を狙う意味もある。だが中長期的にみれば、将来の会社を担う人材が大幅に不足することが予想されるとの危機感からだ。また、経験はなくても、中途採用のように他社の色に染まっていないため、自社の企業文化・理念を教え込むことが容易という判断もある。
日系企業にとっても、中長期的な事業拡大には経営陣を含む人材の現地化が欠かせない。大学の進学率がまだ20%台と低いインドネシアだけに、今後一段とホワイトカラーの需給が引き締まる労働市場で、新卒の採用を増やす企業が今後も拡大しそうだ。