村落法を利用し、各政党が”自党の功績”アピール
4月9日の総選挙のキャンペーンの最中、インドネシアの各政党が党勢拡大の材料として最大限に利用しようと、躍起になって綱引きを繰り広げていることがある。中央政府から交付金を直接、村に配ることを定めた村落法の活用だ。村落法には国の補助金「地方交付税交付金」のうち10%以上と、村の上の行政単位、県・市予算の10%以上を、村へ直接配分することを定めている。2014年の交付金は592兆ルピアで、一部報道ではこのうち107兆ルピアを7万2944村に直接配分する。
これまで県・市を経由して交付金を村に支給しようとしても、途中の着服がひどく村まで届かないのが実態だった。これを如実に物語っているのが汚職だ。2014年2月時点で州・県・市の首長524人のうち、60%に相当する318人が汚職容疑者になっているほど、地方政治は腐敗している。このため、村落法は県・市が村に渡す資金額も明記し、交付金がこれまでのように途中で消えない仕組みをつくった。
だが、これは村への利権分与という側面も厳然としてあるため、政党はここぞとばかり選挙に利用しようと躍起なのだ。ゴルカル党、民族覚醒党(PKB)、国民信託党(PAN)、グリンドラ党、そして民主党も、村には「これぞわが党の功績」として印象付けることに意を注いでいるというわけだ。
こんな状況に、村落法の施行を15年まで先延ばしするよう求める声も上がっている。経営者協会(アピンド)のソフヤン・ワナンディ会長だ。「村落法は汚職の温床に成り得る。特定政党の人気取りに使われているのではないか」と批判している。また、ガヤマン内務相も「7万2944村の監視は難しい。500の県・市が限界だろう」と村落法に基づく村までの公明正大な運用に疑問を投げかけている。