南シナ海での対立で中越国境の街から客消える

南シナ海での対立で中越国境の街から客消える

 ベトナム北部ランソン省。中国と接するこの地の店やホテルではいま、南シナ海での争いが色濃く影を落としている。中国語のタグが付き、ひと目で中国製品だと分かるものを、「品質が悪いのは分かっているけど」と認識していながら扱い続け、かつては中国との商売で潤ってきた商店主たちの表情は一様に暗い。

    彼らの平穏だった日常は、5月に南シナ海の領有権を巡る対立が深まり、状況は一変。これまでホテルで宿泊し、買い物をしてくれた中国人観光客をほとんど見かけなくなり、買い物客がほぼ姿を消した。5月中旬にベトナムで反中国デモが広がると、中国政府がベトナムとの一部交流停止を発表したからだ。

    国境近くの出入国管理の建物も人影はまばらだ。3、4カ月前までの、中国との衝突以前、バスが何台も横付けされ、ガイドに引率された団体の中国人観光客であふれていた、あのにぎわいは幻だったのか。経済と外交で中国に揺さぶられるランソン省は悩めるベトナムの縮図でもある。日本経済新聞が報じた。