拉致再調査「国挙げた体制」 北朝鮮、今度は本気?

拉致再調査「国挙げた体制」 北朝鮮、今度は本気?

 日本人拉致問題が重要な局面にさしかかってきた。北朝鮮の姿勢は2002年、04年の過去の2回とは異なり、国家安全保衛部をはじめ9機関・30人規模で構成される、拉致被害者の再調査を担う「特別調査委員会」を設置。トップに金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の直轄組織の幹部を据え、強力な権限を与えた。こうした対応に日本側は「国を挙げた体制」と判断。また、北朝鮮側の本気度も感じさせる。

 ただ、過去に裏切られ続けてきた苦い経験があるだけに、日本政府は今後の推移を慎重に見極める。というのも、日本側が求めている調査内容は容易なものではないからだ。一連の政府間協議で、拉致被害者以外の拉致の疑いが排除できない不明者として860人のリストを提示している。民間の調査団体が「拉致濃厚」と判断した不明者も含まれる。

 戦後、日朝の赤十字による在日朝鮮人の帰還事業で、配偶者として北朝鮮に渡った日本人妻は1800人を超える。そのまま消息不明なった女性も多い。戦前に北朝鮮に渡った約1400人の残留日本人と合わせ、朝鮮赤十字会を中心に現状を確認する。終戦前後に北朝鮮で死亡した日本人の遺骨約2万1600柱も対象だ。

    これらすべての日本人を調査、日朝間の懸案の包括解決が目的だ。それだけに、あいまいな回答や妥協は許されず、何よりも粘り強い調査・要求の姿勢を貫くことが、結局は早期の収拾につながるとみられる。今回が拉致問題解決のラストチャンスだ。