「賃上げより雇用創出」「今の労組は行き過ぎ」労相補佐官
安定成長を続けるインドネシア経済だが、一方で首都圏を中心に大幅な最低賃金の引き上げに伴い、疲弊しそうな多くの企業群が散見されるのも事実。そうした中、かつての労働運動家から転身、現在は労働移住相補佐官を務めるディタ・インダ・サリ氏(40)が語る労使をめぐる問題についての見解は、現在のインドネシア産業界の実力を推し量る意味で非常に興味深い。
じゃかるた新聞によると、近年の一部の過激な労働組合の活動について、ディタ氏は「できる限りの賃上げを求めるという姿勢は労働者を過剰に保護しすぎで、その結果、自らの首を絞めることになりかねない」との見解を表明。雇用維持・創出や生産性向上を優先するべきだと主張している。
「確かにかつては、いかに高い賃金を勝ち取るかがテーマだったが、それは給与水準自体が低かったから。近年はどう生産性を上げるかが課題。労働者の生産性だけでなく、ガスや電力、きれいな水の確保、インフラや物流網の整備なども含めた産業全体の生産性を包括的に考える必要がある。労働組合もその観点から問題を捉えるべき」と指摘している。
ディタ氏は1992年ごろ、スハルト政権下で大学に通いながら労働運動家として活動を始め、95年にはメーデーを主導。96年には8年の禁固刑を言い渡された。恩赦で3年で出所。2000年にはアジアのノーベル賞ともいわれるマグサイサイ賞の若手指導者賞を受賞。その後、2007年までの労働組合のインドネシア闘争労働組合戦線(FNPBI)の指導者を務めた。その後、新党設立の画策、既存政党からの出馬に失敗。11年から周囲からの”裏切り者”の批判を乗り越え、大臣補佐官として新たなキャリアを歩み始めている。