アジアとG7に温度差 武力行使などに反対では一致

岸田首相は5月2日、訪問先のタイ・バンコクで同国のプラユット首相と会談した。ロシアによるウクライナ侵攻に関して、主権や領土の一体性の侵害や大量破壊兵器による威嚇や使用に反対することで一致した。
ただ、武力行使や力による現状変更を認めないことを確認することはできたが、インドネシア、ベトナム、タイと歴訪したアジア3カ国と、日本はじめG7(主要7カ国)との間では温度差や、大きな認識の隔たりを感じさせた。
これで岸田首相はアジア3カ国の首脳会談を終え、欧州に向かった。

日本 タイへの防衛装備品輸出が可能に 首脳が合意

岸田首相は5月2日、タイの首都バンコクでプラユット首相と会談した。日本からの防衛装備品の輸出を可能とする「防衛装備品・技術移転協定」を締結することで合意し、両首相立ち会いの下で署名式が行われた。
協定は、覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、日本・タイ両国の安全保障分野での協力を強化するのが狙い。日本はこれまで米・英・豪など11カ国と同様の協定を結んでいる。

ウクライナ支援の自衛隊機出発 ドバイ起点に輸送

ウクライナ支援の一環として、国連の物資を周辺国に届けるための自衛隊機(C2輸送機)が5月1日、日本を出発した。今回の支援は国連難民高等弁務官事務所の要請に基づくもの。C2はアラブ首長国連邦・ドバイで国連の備蓄倉庫から毛布などを積み込み、多くの避難者が入国しているウクライナ周辺国、ポーランドやルーマニアなどに週1回のペースで、6月末までが運ぶ。

「力による現状変更」反対で一致 日越首脳会談

岸田首相は5月1日、訪問先のベトナム・ハノイで同国のファム・ミン・チン首相と会談した。ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に、主権や領土の一体性の尊重や即時停戦、核使用反対、人道支援の重要性について一致した。
ただ、歴史的にロシアと軍事面を中心に関係が深いベトナムに配慮、ロシアの名指しは避けた。
ベトナムは今回のウクライナ侵攻でも即時撤退を求める国連決議で棄権し、ロシアの国連人権理事会の資格停止決議でも反対している。

ロシアの軍事攻撃を強く非難 日インドネシア首脳会談

岸田首相は4月29日、インドネシアの首都ジャカルタを訪問、大統領宮殿で同国のジョコ大統領と90分間会談した。会談後、ウクライナ情勢について、力による一方的な現状変更は認められず、ロシアによるウクライナへの軍事攻撃は容認できないと一致した。「明白な国際法違反であり、アジアを含む国際秩序の根幹を揺るがすものであって強く非難する」と強調した。そのうえで、ロシアに武力行使の即時停止と対話による打開を求め、日・インドネシアで世界経済への影響に対処することで合意した。
また、岸田氏は東・南シナ海について「力を背景とした一方的な現状変更の試み、経済的威圧に強く反対する」と説いた。ジョコ氏は「国連海洋法条約を含む法の支配に基づく地域の平和と安定の維持が重要」と語った。

日本 インドネシアに円借款700億円追加,巡視船供与

岸田首相は4月29日、インドネシアのジョコ大統領との会談で、巡視船供与し海上保安能力の向上を支援する旨、伝えた。また、西ジャワ州パティンバン港開発のための円借款を700億円程度供与することも表明した。すでに実施ている1,200億円規模に追加する。同国の物流インフラ整備を支援、成長を後押しする。

日独首脳会談 安全保障の協議体新設 23年初会合へ

岸田、ドイツのショルツ両首相の首脳会談が4月28日、首相官邸で行われた。この結果、①安全保障などに関する首脳級の協議体を立ち上げ、2023年に初会合を開く②日独の外務・防衛担当閣僚会議(2プラス2)を早期に開催する-などで合意した。このほか、中国の覇権主義的な動きを念頭に「東・南シナ海での一方的な現状変更に反対する」ことを確認した。

日本 外交官追放でロシアに抗議 全責任はロシア

在ロシア日本大使館は4月27日、ロシアによる日本の外交官ら8人の国外退去要求を受け、ロシア側に抗議したと発表した。ロシアのウクライナ侵攻を「明白な国際法違反」と批判し、「即刻すべてのロシア軍部隊を撤収するよう改めて強く批判した」と述べた。そのうえで「日ロ関係をこのような状態に追いやった責任は全面的にロシアにある」としている。

JICA タイの電動フェリー27隻導入に協調融資

国際協力機構(JICA)は4月27日、タイのE Smart Transport Company Limitedとの間で、プロジェクトファイナンスによる融資契約を締結したと発表した。同事業は、スポンサー企業のEnergy Absolute Public Company Limited(タイ)が出資し、首都バンコクのチャオプラヤ川に大気汚染物質を排出しない電動フェリー27隻を導入することで、バンコク首都圏の大気汚染や都市環境の改善に寄与するもの。
アジア開発銀行(ADB)、ADBが管理するクリーンテクノロジーファンド、タイ輸出入銀行との協調融資により実施する。同事業は電動フェリーをASEAN地域において商業ベースで大規模導入する初の案件となる。