「黒い雨」訴訟 国が上告断念 政治決着で確定へ

菅義偉首相は7月26日、原爆投下後に降った放射性物質を含む「黒い雨」訴訟を巡り、原告84人(うち14人は死亡)全員を被爆者と認めた広島高裁判決について、上告を断念すると表明した。
これにより、原告が「いずれも黒い雨に遭ったと認められる」と結論付けて全員に被爆者健康手帳を交付するよう命じた広島高裁判決が28日の上告期限を前に政治決着で確定する見通しとなった。
広島県・市の湯崎知事と松井市長は政府に対し、被爆者の高齢化などを理由に、上告断念による裁判の終結と幅広い救済への政治判断を迫っていた。

パナソニック 中国江蘇省で高齢者向け住宅公開

パナソニックは7月19日、中国江蘇省宜興市で高齢者向け住宅「雅達・松下社区」を公開した。同住宅は協業する中国健康事業大手の雅達集団が開発する高齢者向けスマートタウンの一角に設けた。建設面積は約30万㎡で、戸建てと低層住宅合わせ計1,170戸を設けている。2021年10月にも入居を始める。なお、2020年10月に発売した戸建て型の約170戸は完売したとしている。同社では中国における健康・介護事業に注力する。
中国では急速に高齢化が進行。60歳以上の人口は2020年末時点で2億6,000万人を超え、今後5年は毎年約1,000万人のペースで増えていくと予測されている。

エーザイ 認知症新薬 米国の「投与環境の整備に全力」

製薬大手のエーザイ(本社:東京都文京区)は7月19日、米国で投与が始まったアルツハイマー病新薬「アデュカヌマブ」(一般名)について、「投与環境の整備に全力で取り組む」とのコメントを発表した。
米バイオジェンと共同開発した同新薬を、一部の米医療機関が使用を見送る方針を示し、普及に懸念が生じている。こうした動きを受けたもので、エーザイでは「他の米大手医療機関などで採用が進み、投与人数も増えている」としている。

コロナ禍で世界1億1,400万人失業 若者は深刻

OECD(経済協力開発機構)の分析によると、新型コロナウイルス禍により2020年に世界で1億1,400万人が職を失った。OECD加盟38カ国全体の失業率は高止まりしており、雇用情勢が感染拡大前の水準に戻るのは2023年以降とみている。
OECDによると、仕事に就いている人と失業者との格差は各国で拡大し、学校に行けず、仕事も見つからず、職業訓練の機会もない15~29歳の若者は約300万人増えた。
2020年2月のOECD加盟国全体の失業率は5.3%だったが、世界保健機関(WHO)が「パンデミック」の発生を宣言すると、同年4月に8.8%に急上昇。2021年5月に6.6%に低下したが、いぜんとして高水準で、若者の失業率は13.6%と飛び抜けている。

介護職員 25年度に243万人必要 厚労省が推計

厚生労働省は7月9日、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年度に、介護職員が全国で約243万人必要になるとの推計を発表した。2019年度は約211万人で、約32万人不足していることになる。
また、高齢化がほぼピークになる2040年度についても初めて推計。必要な介護職員数は約280万人にまで増えるとしている。

政府の特例貸付1兆円超,リーマンS後の50倍以上

厚生労働省の集計によると、新型コロナコロナ禍による生活困窮世帯に政府が無利子で貸付する特例貸付は「緊急小口資金」と「総合支援資金」の両方を合わせ、同制度が始まった2020年3月から2021年6月19日時点で総額1兆130億円余(速報値)に達したことが分かった。
内訳は緊急小口資金が2,346億円、総合支援資金が7,784億円。両方を使うと最大200万円まで無利子で借りられる。リーマン・ショック後の影響を受けた2009年度の50倍以上に膨らんでいる。巨額の融資残高は失業、休業、雇い止めなどで、収入の減少が長引いていることを如実に物語っている。

日本の世帯平均2.27人,東京「2人割れ」単身化進む

総務省が6月25日発表した2020年国勢調査の集計(速報)で、1世帯当たりの人数の減少が全国で進行している状況が浮き彫りになった。全国平均は2.27人と5年前の前回調査から0.11人減り、東京は1.95人と全国最低を記録、初の「2人割れ」に突入した。以下、北海道2.12人、大阪2.14人、京都2.17人、鹿児島、神奈川2.19人と続いている。これは都市部だけでなく、過疎地を抱える地方など全国で単身世帯が増えている。

社会でどう支える高齢者介護-単身化の進行で
単身世帯の増加が示す社会問題の一つが家族のケアが届かない一人暮らしの高齢者の増加だ。社会としてどう支えていくのか、極めて重い課題を突きつけいる。
日本はこれまで家族による高齢者のケアを期待し、そのことが社会保障費の増大をある程度抑えてきた側面があった。だが、単身世帯の増加で抜本的な見直しを迫られることになる。その結果、社会保障費のさらなる膨張圧力がかかる可能性もある。

20年度の労災認定608件で最多 1位はパワハラ

厚生労働省は6月23日、仕事が原因でうつ病などの精神障害を患い、2020年度に労災認定されたのは前年度比99件増の608件だったと発表した。1983年度の統計開始以降、2年連続で最多を更新した。原因別では昨年、認定基準項目に追加された「パワーハラスメント」が99件で最も多かった。自殺(未遂含む)の認定は前年度比7人減の81人。
申請は2051件で過去2番目の多さ。うち女性は999件、48.7%を占め、5年前に比べ約10ポイント増えた。

20年保育施設の子どもの重篤事故最多の2,000件超

内閣府のまとめによると、2020年に全国の保育施設や幼稚園、放課後児童クラブなどで子どもが事故で死亡したり、治療に30日以上かかる重篤な事故に遭った報告が2015件に上り、前年を271件上回り過去最多となった。現在の形で統計を取り始めた6年前に比べ3倍以上に急増している。
認可保育所での事故が最も多く1,081件、次いで放課後クラブが429件、認定子ども園が312件などと続いた。けがは「骨折」が最も多く、全体の8割以上を占めた。死亡事故は5件。