過激派の温床となるイスラム学校・寄宿塾「プサントレン」が一部で問題化する一方、国際化の流れを受け、インドネシアで日本語や日本文化を教える学校が登場。伝統と発展を調和させる日本独特の「和」の心を学んでいる。ジャカルタ郊外のイスラム学校、マドラサ・プンバングナンの日本語教室がそれだ。
同校のカリキュラムは宗教と一般科目が半々。日本語教育は2006年に、調和や規律の心を育むきっかけになればとの想いから始まった。同校のダルル校長は04年、日本政府のイスラム学校指導者の招聘事業で選ばれ日本を訪問。町工場や学校、仏教施設を巡り、日本人と対話した。この事業は初回の04年から毎年、約10日間の日程で実施。計85校から91人の教師が日本を訪れた。
ただ、表面的には和やかな文化交流に映る招聘事業だが、実は企画したのは外務省の国際テロ対策協力室や、インドネシアで毎年のようにテロに見舞われた経験のある日本の大使館員らだ。過激派のメンバーにはイスラム寄宿塾出身者が少なくない。こうした寄宿塾に忍び寄る過激思想を絶つ方法として、日本政府が実行したのが、発言力のある優良校を端緒に日本文化を知ってもらう事業。伝統を重んじながら、新しいものを取り入れて発展を遂げてきた日本の調和のさまをインドネシアに紹介することが狙いだ。
成果は徐々に広がりつつある。10年に訪日したプサントレン・ダルサラームのファドリル校長は、精神文化に共通性を感じ、11年に日本の本や装飾品を展示した「日本文化センター」を設けた。他校でも、参観日や大学の理系学部との交流、土足禁止の規則など、日本で影響を受けて導入した事例もあるという。