ジャカルタで立ち退き巡り州と貧困層の紛争問題が頻発

ジャカルタで立ち退き巡り州と貧困層の紛争問題が頻発
 ジャカルタで立ち退きを巡る州と貧困層の紛争問題が頻発している。紛争の主因は、首都中心部の治水を担う北ジャカルタ・プルイット貯水池の改修を巡って、州が強制的に違法住民撤去に踏み切ったことにある。このきっかけは1月の首都大洪水だ。隣接する排水設備が故障し、大統領宮殿を含むジャカルタ中央部の排水機能がマヒした。日本の無償資金協力の排水機場改修と組み合わせ、池の面積を広げ、浅くなった底をさらうことが緊急の課題だ。
 州は対応を急いでいる。1週間前に住民に告知し、5月7日までに北西岸700世帯を即撤去。雨季に入るまで半年しかないからだ。8カ月で貯水池から20㍍以内の州保有地から住民を立ち退かせるのが目標だ。しかし、問題は山積している。まず、移転先が不足している。州関係者によると、立ち退き予定は3000世帯だが、新築したムアラ・バル州営賃貸住宅(ルスナワ)は400室にすぎない。このままでは少なくとも2600世帯が路頭に迷う。
 賃貸料の問題も不透明なままだ。住民の立ち退き前は、公営住宅の家賃を通常50万~70万ルピアから補助金で20万ルピア以下に抑えて入居させると説明していた。だが、立ち退き期限から3週間経過した後も、移転先は宙ぶらりんなままだ。こうした一方で、住民の交渉を代行するNGO(非政府組織)を拒絶し、機動隊にテントを張って抗戦する住民を退去させるなど、州の姿勢が硬化してきている。