小笠原海域でサンゴ密漁船の投棄網が漁の妨げに
世界自然遺産の小笠原諸島(東京都小笠原村)周辺の海で、「宝石サンゴ」を密漁していた中国漁船が投棄したとみられる漁網が、漁の大きな妨げになっている。地元漁師が仕掛けた釣り針が、海底に残る網に引っ掛かるケースが相次いでいるのだ。網がどれだけ捨てられているのか実態は不明で、水深100㍍以上の深い海ですべてを回収するのは困難だ。
地元漁業者によると、釣り竿に「手ごたえを感じた」「当たりがきた」と思ったら、掛かったのは網というケースが相次いでいるという。地元の漁では、ほとんど網は使わず、釣り竿を使う。2014年秋に大挙して押しかけた中国の密漁船は、重りを付けて海底に沈めた網を引っ張る方法で、海底に生息するサンゴを根こそぎ奪っていった。
小笠原島漁業組合では漁で掛かった網は、密漁船が海上保安庁の巡視船が近づいた時などに、投棄したものだとみている。「密漁の証拠」だとして、14年12月から回収を始めた網は24枚に上り、同漁協横の広場に積み上げられている。
水産庁が15年3月、この海域で無人探査機を操作して行った調査では、10地点計約0.35平方㌔㍍の範囲に381枚の網が投棄されていた。多くは水深200㍍付近の岩礁に絡まっていた。大きな網目や色合いなどの特徴から、中国漁船が使っていたものとみられる。同庁の担当者は「確認された網はあくまでも氷山の一角。全体の量は想像がつかない」と話している。