地方分権と利権争奪戦激化の間で”揺れる民主化”
インドネシアで地方分権化が推進される中で、経験の乏しい人材が法務幹部になる適材適所の乱れが、違法条例の乱立や、自治体再編に伴う利権争奪戦の激化を招くケースが各地で多発している。分権スローガンの下、自分たちの行政府を欲する住民の動きと、予算に裏打ちされた本来の自治体治政の実現あるいは実践との間でいま、インドネシアの「民主化」の中身は大きく揺れている。
インドネシア内務省は上位法令との矛盾を理由に、この10年間で全国の州や県、市に条例約1900本の廃止を勧告した。このほとんどが地方税に関する条例だ。そして、その多くが国の規定を超えて税率を決めていた。こうした現状を憂え、ユドヨノ大統領は昨年8月の国会演説で「苦情の多くは中央ではなく、地方から寄せられている」と指摘。不透明で地方行政の運営が経済発展に悪影響を及ぼしかねない現状を警戒した。
業者からロイヤリティーが落ちる天然資源が豊富な地域は別として、地方の多くの自治体が開発予算の確保に苦慮している。そこで、権限を持てば”カネ”に目が向くのは自然の成り行きだ。手っ取り早く収入を上げようと、税率の引き上げや携帯電話の中継地への課税など、こぞって条例制定を進める結果になったというわけだ。地方首長が退役軍人の天下りで占められていたスハルト政権時代とは異なり、公選で生まれた首長は「正当性」を持つからだ。