いまの日本社会に存在する様々な旧弊を嫌悪し、若い世代の日本人がインドネシア、タイなどで”就活”する動きが増えている。
インドネシアの首都ジャカルタの日系企業で働く20歳代の日本人の若者に共通するのは「自分が簡単に入れ替え可能なパーツではなく、人材として必要とされている」「成長する経済・社会の中に身を置き、やりがいを実感したい」などの、日本ではもはや体感することのできない、強い思いだ。そうした思いを叶えられる場所、「若者が夢、野望を抱ける国」として、彼らはジャカルタを選んだのだ。
しかし、なぜ海外なのか、ジャカルタなのか、シニア以上の世代には端的には理解しにくいところだ。しかし、1990年代以降、日本が「失われた20年」と揶揄(やゆ)されるように、実は彼らは日本経済の「成長を知らない子供たち」なのだ。かつて”エコノミック・アニマル”と称されたように、日本の代名詞でもあった経済の強い成長力は衰え、この20年で国際関係も経済のしくみも、人口構成も大幅に変わったのに、制度改革がそこに追いついていない。日本にはびこる「学歴主義」「社歴至上主義」など、偏見なく外国に目を向ける彼らは若者独特の鋭敏さで、こうした旧弊を忌み嫌い、職場に漂う「抑圧感」「窮屈さ」に直感的に抵抗を覚えるのだ。
いまの25歳が物心ついたころ、日本ではバブル経済が崩壊した。10歳のころ、生産年齢人口(15~64歳)がピークを打ち、下り坂になった。一時的な現象と思われていた不況が、不幸にもそれが当たり前となるような時代に思春期を過ごした世代だ。
日本からのインドネシア進出企業は1255社。日本式ビジネスを理解した日本人を求める企業の求人は増え、現地では常時100件以上に上っているという。現地採用された日本人の平均給与は手取りで1700~3000㌦(14万~25万円)前後。物価水準は日本の1/3~1/4のため生活に不自由することはない。
だからこそ、「どうせなら、未来の感じられる国で」「自分が、働く国の経済に一役買っている気持ちを持てて、日々やりがいがある」などの思いを実感できるジャカルタが、彼らが望む働く場所としての条件を揃えているのだろう。