歴史文書の保存・修復へ日・イ連携で専門技術者育成
日本とインドネシアの学術専門家が連携し、大地震や津波などの災害で被災した歴史文書の保存・修復を進めている。この作業を担っているのは東京外国語大学アチェ文化財復興支援室。スマトラ沖地震・津波直後の2005年、アチェ州の歴史文書の被災状況を調査するため創設された。この間、文化庁の事業としてアチェ州で文書修復セミナーを開いたり、アチェ州から日本へ研修生を受け入れたりして、専門技術者を育成してきた。
業務はアチェ州や西スマトラ州などのスマトラ島から、ジャワ島、スラウェシ島など各地のモスクや家屋に眠る古文書・歴史文書の写本を探り出し、保有者の了解を得て修復作業に取り組む。これまでの作業では、インドネシアにおけるイスラム普及など歴史解明につながる文書も多く、文化財としての価値を周知しながら、専門技術者の育成に力を注いでいる。
研修では西スマトラ州の州都パダンの国立アンダラス大学と同州立公文書館の2人を日本へ招聘した。国立公文書館や元興寺文化財研究所、奈良文化財研究所、京大総合博物館などの機関が協力。のりの作り方や資料の乾燥方法、繕い方、裏打ちなど和紙を使った破損資料の補修技術を伝えた。また、研修生は宮城県石巻市を訪れ、東日本大震災の津波被害を受けた際、実際に行った、安価な材料で公文書に付着した泥と塩を除去する方法を学んだ。