タナアバンの露天商移転に大きなカベ 店舗は閑古鳥
ジャカルタ特別州が懸案として進めていた首都最大の露天商地帯、中央ジャカルタ・タナアバンでの強制立ち退きから7カ月が経過した。「東南アジア最大級の繊維市場」ともいわれたタナアバン市場の移転先として、同州が用意した移転先の一つ、州営市場「ブロックG」。これまでのところ、広く世間にアピールするはずだった州の思惑は完全に外れ、露天商移転のモデルケースが大きな壁にぶつかった形となっている。
不本意ながら移転に応じた露天商らが当初、懸念していた通り、移転先一帯の来訪者自体が極端に少ない立地の悪さが響き、どの業者も商売が全く振るわないと口を揃える。そのため、同市場3、4階の移転商店968戸にはまさに閑古鳥が鳴く。そして、残ったのは整然と連なるシャッターの海だ。
タナアバンを追われた零細な露天商にとって、そもそも身の丈に合った転居先の選択肢はあったのか。卸売商がひしめくタナアバンの州営市場「ブロックA」の賃料は年間2億ルピアはする。ほとんどの露天商には手が届かない。路上は州内で取り締まりが進む。受け皿になるはずだったモナスでの公営夜市場は2月中旬から開催中断。自警団主催の夜市場にも州政府が締め付けを強くしている-といった具合だ。
こうしてみると、露天商には生活の糧を得ようにも八方ふさがりで行き場がないのだ。立ち退かせるだけでは路頭に迷う零細自営業者を増やすだけで、少し視野を広げて見てみると何の解決にもなっていない。
インドネシア中央統計局によると、2013年8月現在、首都の労働人口518万人のうち、26%の136万人が労働法規の外で働く零細労働者で、いま同国で著しい最低賃金引き上げの恩恵に浴していない人たちだ。これらの人たちを調整弁にした形での対策では、とても抜本的な解決策とはいえない。