「はやぶさ2」小惑星の物質5.4g 目標上回る量採取の成果

萩生田文部科学相は12月18日、JAXA(宇宙航空研究開発機構)を視察し、「はやぶさ2」のカプセルから採取された小惑星「リュウグウ」のものとみられる物質の量が5.4gと、目標だった0.1gを大幅に上回る量だったことを明らかにした。5.4gあれば今後、様々な分析や研究ができるという。
サンプルの容器は、まだ2つの部分の開封作業が残っていて、どのような物質が採取されているのか注目される。

日本「伝統建築工匠の技」無形文化遺産へ登録決定 宮大工・左官など

ユネスコ(国連教育科学文化機関)の政府間委員会は12月17日、日本の木造建築物を受け継いでいくための宮大工や左官職人などの技術「伝統建築工匠の技」の無形文化遺産への登録を決めた。
対象は①文化財建造物の保存に欠かせない「建造物修理」の技術②屋根を葺(ふ)く技術の一つ「かやぶき」③壁の表面を土や漆喰(しっくい)で仕上げる「左官」④「畳製作」-など17の伝統技術で構成されている。
今回の登録で日本の無形文化遺産は「和食」や「和紙」などに加え22件となる。

BIE総会で「大阪・関西万博」開催計画承認 活動本格化へ

フランス・パリで12月1日、BIE(博覧会国際事務局)の総会が開かれ、2025年の「大阪・関西万博」の開催計画が承認された。同総会にオンラインで参加した井上万博担当大臣は、テーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に沿って「ポストコロナを見据え、万博を将来の社会をデザインする、素晴らしい機会にしたい」と述べた。
計画の承認を受けて、日本政府は年内に万博の基本方針を策定するほか、各国にパビリオンの出展を呼び掛けるなどの活動を本格化させる予定。BIEの総会は今年6月に開かれる予定だったが、新型コロナ禍で延期されていた。

信長の安土城の天守復元プロジェクト 実物建築は困難と判断

滋賀県の三日月大造知事は11月2日、織田信長が築いた安土城(滋賀県近江八幡市安土町)の天守復元プロジェクトについて、「資料が十分でない」として、現状では構造や規模などを忠実に再現した実物の天守を城跡に建てるのは困難との見方を明らかにした。そのうえでデジタル技術の活用などで城を再現する案を軸に検討する考えを示した。年内に最終の復元方向を公表する方針。
同県は2026年の安土城築城450年に向け、2019年4月に「『幻の安土城』復元プロジェクト事業を立ち上げた。これに基づきこれまで天守の忠実な復元はじめ、コンピュータグラフィックス(CG)でつくる仮想現実(VR)や拡張する現実(AR)などデジタル技術で見せる案など計4案を検討していた。

奈良・飛鳥京跡苑池 庭園は日本風に変化?池の全容ほぼ判明

奈良県立橿原考古学研究所が行った明日香村にある国内最古の本格的な庭園跡「飛鳥京跡苑池」の発掘調査で、新たに石を階段状に積み上げて造った、中国などにはない形状の池の護岸などが見つかり、専門家は海外から伝わった庭園文化がどのように日本風に変化したかを考える貴重な資料だとしている。
明日香村の飛鳥京跡苑池は、1300年余り前の飛鳥時代に天皇の宮殿のそばに造られた国内最古の本格的な庭園の遺跡。調査の結果、最大50cmほどの石を7段から9段階段状に積み上げた護岸が新たにおよそ20m分見つかった。これまでに見つかったものを含めると、護岸は池の周囲およそ140mにわたり、池のほぼ全容が判明した。さらに池内側は中心に向かって緩やかに傾斜をつけるように土が盛られていることも分かった。
階段状の護岸は当時の中国・朝鮮の庭園の池にはほとんどなく、池の中心向かって傾斜をつける構造は、後の日本庭園にも通じるものがあるという。今回の発掘現場は10月31日午前10時から一般公開される。

国宝の絵図「六道絵」36年ぶりに15枚すべて公開 大津市

滋賀県大津市歴史博物館で、大津市の聖衆来迎寺と盛安寺が所蔵する絵図など、およそ100点を集めた企画展が開かれている。この中には国宝の絵図「六道絵(ろくどうえ)」が含まれ、36年ぶりに15枚すべてが公開されている。企画展は11月23日までだが、六道絵すべてが展示されているのは11月1日まで。
六道絵は、仏教で説かれる死後の世界を鎌倉時代に15枚にわたって描かれたもの。①閻魔大王から生前の行いの裁きを受ける場面が描かれている「閻魔庁図(えんまちょうず)」、②最も苦しい地獄での残酷な拷問を受け苦しむ人々の姿が生々しく描かれている「阿鼻地獄図(あびじごくず)」、③地獄で釜茹でにされる際、念仏を唱えると釜が割れ、救われる様子が描かれ、念仏の力が強調されている「優婆塞戒経説話図(うばそくかいきょうせつわず)」などがそれ。

初披露4件含む59件の宝物を出展 奈良「正倉院展」始まる

奈良国立博物館で10月24日から、正倉院の宝物を公開する秋の恒例行事「正倉院展」が始まった。11月9日まで。正倉院展は奈良時代の聖武天皇ゆかりの宝物を集めたものだが、今年は初出展の4件を含む59件の宝物が出展されている。
象の歯の化石「五色龍歯(ごしきりゅうし)」は、聖武天皇の妃、光明皇后が東大寺に納めたもので、当時は削って粉にしたものが鎮静作用のある漢方薬として用いられていた。また、羊毛でできた長さが2m余あるフェルトの敷物「花氈(かせん)」は、東大寺の法要で使用されたとみられ、草花の文様が円形にあしらわれている。
今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、当日券の販売はなく、日時が指定された前売券が必要だが、ほぼ完売しているという。

「時代祭」巡行中止 平安神宮で神事のみ執行 コロナ終息祈る

京都三大祭の一つ「時代祭」は新型コロナウイルスの影響で呼び物の練り歩きが中止となり10月22日、平安神宮で神事だけが執り行われ、関係者などおよそ30人が新型コロナの終息を祈った。
時代祭は、平安京遷都1100年を記念して明治28年から始まった。平安時代から明治時代までの貴族や武家などそれぞれの時代を象徴する装束をまとった、およそ2,000人の行列が秋の都大路を練り歩く盛大な巡行が特色。

江戸時代の国友一貫斎の望遠鏡製作道具発見 滋賀県長浜市

滋賀県長浜市などの調査によると、江戸時代に日本で初めて反射望遠鏡をつくった発明家、国友一貫斎が使用していた道具などおよそ100点がまとまった形で発見された。
今回見つかったのは一貫斎が反射望遠鏡を製作する際に使用していたネジ回しや千枚通し、鏡やレンズを磨く砥石(といし)、製作途中のレンズなど。長浜市にある一貫斎の生家に保存されていたものを市などが調査、確認した。江戸時代の科学技術にまつわる製作道具が、これほど多く残されているのは例がないという。
国友一貫斎は江戸時代後期、今の滋賀県長浜市にあった鉄砲鍛冶の家に生まれ、今からおよそ190年前、日本で初めて反射望遠鏡を製作したことで知られている。

奈良時代 平城宮跡で出土の木簡展 今年は長屋王家の暮らしの一端

奈良市の平城宮跡資料館で、奈良時代の平城京跡で出土した、有力貴族ゆかりの木簡を集めた展示会が開かれている。同展示会は奈良文化財研究所が毎年開いているもので、今年は長屋王家の木簡が展示されている。展示会は11月23日まで。期間中、合わせて48点の木簡が3回に分けて展示される。
長屋王は天武天皇の孫にあたる有力貴族で、聖武天皇の御代、藤原氏一族が政権の枢要部をほぼ制圧していた中、藤原氏の専横に抵抗した王族の一人。長屋王家の屋敷内跡から出土した木簡のうち1,669点が2020年9月、国の重要文化財に指定されている。
領地から届いたアワビの荷札、屋敷内の使用人に米を支給した際の記録用の木簡、同じ場所から出土した土器なども展示されている。木簡には普段の生活がありのまま書いてあり、木簡を通して奈良時代の上級貴族の暮らしぶりの一端がうかがえる。