京都府宇治市の世界遺産、平等院は、平安時代に造られた鳳凰堂の扉を調査した結果、雲に乗った菩薩が飛び交う姿が描かれていたことが分かったと発表した。平等院は一昨年から東京文化財研究所や奈良女子大学の研究者とともに、1,000年近く前の創建当時に造られた鳳凰堂の扉を、蛍光X線など特殊な光を使って装飾の調査を進めてきた。
その結果、高さおよそ4.6m、幅およそ1.6mの扉の表面から鉛や銅を使った顔料が検出され、扉全体を使って1つの絵が表現されていた。浮かび上がった輪郭などから、山や緑を背景に建物の上を雲に乗った菩薩などが飛び交う姿が描かれていたことが分かったという。
岸和田 コロナ禍で”だんじり”引き回し中止 神事のみ執行
大阪府岸和田市の「岸和田だんじり祭」は10月11日、新型コロナウイルスの感染防止のため、大勢の見物人が集まる名物の”だんじり”引き回しが中止され、五穀豊穣を願う神事のみが執り行われた。市によると、岸和田だんじり祭が中止になるのは昭和20年以来75年ぶり。
豪快かつ勇壮にだんじりを引き回すことで知られる同祭は、江戸時代に始まったと伝えられ、300年以上続く伝統の祭り。
創建当初の東大寺東塔の再建目指し2つの復元図作製
奈良文化財研究所は鎌倉時代に再建された鎌倉時代の東大寺東塔について、姿の異なる2種類の復元図を作製した。鎌倉時代の東塔は高さ96m、塔の基壇は1辺およそ27m四方の類のない大きさとした。
一つ目の図は東塔の再建を呼びかけた僧侶、重源が建設に携わった東大寺南大門の建築様式を参考にしたもの。屋根のそりがあまりない、シンプルな造りが特徴。一方、これを引き継いだ僧侶、栄西が建設に携わった東大寺鐘楼の建築様式を参考にした復元図は、屋根にそりがあり、それぞれの層に窓などが設けられている。
東大寺は奈良時代の創建当初の東塔の再建を目指しており、同研究所は今回の経験を生かして復元図を作製することにしている。
唐招提寺で鎌倉時代の僧侶・凝然像の開眼法要
鎌倉時代の僧侶で、数多くの仏教の著書を残した「凝然(ぎょうねん)」の木像が完成し9月26日、唐招提寺で魂を入れる開眼法要が営まれた。木像は2021年で凝然の没後700年になるのを記念して造られたもので、凝然が筆と巻物を手にしている高さ80cm程度の像。
凝然は唐招提寺や東大寺戒壇院で「長老」となった鎌倉時代の僧で、仏教の入門書とされる「八宗綱要」など数多くの著書を残している。
超高温・超短周期の海王星型惑星を発見 東大など研究チーム
東京大学大学院の教授らの参加する国際研究チームは9月22日、NASAが打ち上げたトランジット惑星探索衛星TESSと地上望遠鏡の連携した観測により、公転周期が19時間しかなく、惑星の温度が摂氏1,700度を超えると見込まれる超高温・超短周期の海王星型惑星LTT9779bを発見したと発表した。
LTT9779bの半径は地球の約4.7倍、質量は地球の約29倍で、海王星をやや大きくしたような系外惑星。LTT9779bの詳細、超高温の惑星がどのような大気を持つのか、またどのように生まれたのか、今後の研究が待たれる。
今回の国際研究チームには東京大学大学院総合文化研究科附属先進科学研究機構の成田憲保教授、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻の田村元秀教授らが参加している。
今回の研究成果は2020年9月21日、国際科学雑誌『Nature Astronomy』の電子版に掲載される。
国宝「十二天屏風」など50点余を展示 東寺で名宝展
京都の東寺(京都市南区)の宝物館が開館して55年になるのを記念して、所蔵する貴重な文化財などを公開する名宝展が9月20日から始まった。宝物館の会場には、屏風や経典など50点余りが展示されている。11月25日まで。
国宝「十二天屏風」は鎌倉時代のもので、帝釈天など12の守護神が描かれている。平安時代の平面的な描き方とは異なり、線は強弱がつけられ、守護神の体に角度や動きなどの躍動感があるのが特徴。2019年1月に本坊の蔵から見つかった「鑑査状」には「美術上の模範になるべきものと認定する」との評価が書かれている。
鑑査状は、明治時代に当時の宮内省が発行した古典美術の評価を等級付けした証書。この作業の際、美術評論家の岡倉天心やフェノロサなどが調査員として派遣されたとの記録が残っている。
全国から城好き大集合 滋賀・大津市で初のイベント
全国から城好きの人たちが集まるイベントが集まるイベントが滋賀県大津市で9月20日開かれた。このイベントは毎年横浜市で開催されているが、今年は初めて大津市でも開かれることになった。
会場のびわ湖ホールで来場者は、専門家の講演や全国の城の写真や模型の展示を楽しんだ。講演会は定員を半分の350人に制限して、入れ替え制で開かれた。講師の滋賀県立大学の中井均教授が近江八幡市に築かれた観音寺城などの山城について講演した。イベントは21日も開かれた。
盗まれたガリレオ、ニュートンの著書をルーマニアで発見
ルーマニアの地元メディアによると、3年前に英国で盗まれた17世紀に科学者ガリレオ・ガリレイやアイザック・ニュートンが著した書籍の初版本などおよそ200冊が、ルーマニアの住宅の床下から見つかった。
英国では同じ手口による貴重な文化財を狙った窃盗事件が相次いでいて、警察はこれまでにルーマニアの犯罪集団の13人を逮捕・起訴している。これらの本は3年前、英国のオークションにかけられるため、ロンドン西部の倉庫で保管されていたところ、屋根に穴が開けられ、侵入者を探知するセンサーをかいくぐる形で盗まれたという。
警察は被害額について、盗難に遭った書籍類は250万ポンド、およそ3億4,000万円相当の価値があるとしている。
「百鬼夜行絵巻」京都・大徳寺真珠庵で9/19から特別公開
様々な妖怪の行列などを描いた「百鬼夜行絵巻」が、京都市北区の大徳寺真珠庵で9月19日から特別公開されている。この絵巻は国の重要文化財で、室町時代の絵師・土佐光信が描いたとされる。長さがおよそ8mあり、赤鬼や青鬼のほか草履や傘などの日用品に手足が生えた妖怪などが、躍動感あふれるタッチで描かれている。
特別公開は2回に分けて行われる予定で、前期は9月19~10月14日まで、後期は10月24~11月23日まで。
大英博物館 葛飾北斎の未公開作103点をオンライン公開
英国の大英博物館は9月3日、江戸後期の浮世絵師・葛飾北斎の未公開作品103点を収蔵し、同日よりオンラインで公開を始めると発表した。これらの作品は1829年に「万物絵本大全図」という本の挿し絵として描かれたが、その本自体は出版されなかったという。
これらは代表作「富嶽三十六景」を手掛ける2年ほど前の作品だが、大英博物館は「北斎のキャリアの転換点で、実際には新たな創造性を発揮していたことを示している」として、作品の発見が北斎の生涯を見直す契機になる可能性があると指摘している。