疑問視されるムティアラ銀行への公的資金130億円再注入

疑問視されるムティアラ銀行への公的資金130億円再注入
 横領・汚職事件の渦中にあるインドネシアのムティアラ銀行(前センチュリー銀行)に対し、預金保険機構(LPS)がこのほど、新たに1兆5000億ルピア(約130億円)の公的資金の再注入を決めたことで、この措置を疑問視、その正当性が問われかねない事態となっている。
 LPSがムティアラ銀行に公的資金の再注入を決めたのは、インドネシア中央銀行が12月19日に発布した国内銀行の自己資本規制を厳格化する中銀令2013年15号を受けた措置だ。自己資本の量と質を高める国際規制「バーセル3」を、国内銀行に段階的に導入することを目指す。2014年1月から投資や融資などの高リスク資産に対して、内部留保、普通株など低リスク資産の割合を高めることなどを規定している。バーセル3はリーマン危機以降、再発防止のために策定された。中銀令ではバーセル3の細目を19年までに全適用する方針も盛り込まれている。
 ただ、忘れてならないのはムティアラ銀行の救済を巡っては09年総選挙前、6兆5000億ルピア(約560億円)の公的資金が注入され、これがいまも未解決の横領・汚職事件につながったことだ。しかも、同銀行はこの公的資金注入後もいぜん自己資本比率が低い状態にあるのも大きな問題だ。
 LPSは公的資金注入後、ムティアラ銀行の健全化が済み次第、04年に定められたLPS法の定めに基づき、同銀行株99%を民間に売却する方針だ。だが、横領・汚職事件の渦中にある同銀行の疑惑解明を差し置いて、いやその事実にふたをしたまま売却されるという不明朗な処理が、果たして各方面の理解を得られるものなのか、大いに疑問だ。